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内科・外科・消化器内科・肛門外科

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胃カメラ

当院では開院当時より下記の3つの方法で胃カメラを行っています。

  1. 通常の経口内視鏡    (鎮静剤を使用しないで口から挿入する胃カメラ)
  2. 苦痛の少ない経鼻内視鏡 (鼻から挿入する細径の胃カメラ)
  3. 苦痛のない経口内視鏡  (鎮静剤を使用した口から挿入する胃カメラ)

昨今は患者様の苦痛を軽減するために②や③を行う施設が増えています。
しかしながら私は全ての患者様に同じように経鼻内視鏡を行ったり、鎮静剤(静脈麻酔)を使用した胃カメラを行うことに違和感を覚えます。
なぜかと言えば、人はそれぞれ検査の必要度や苦痛の感じ方が違うからです。

誰でも苦痛を受けたくないと思っているし、胃カメラを受けるのであれば少しでも苦痛の少ない方法でと思うのは当然です。
ただそのメリットとデメリットをよく理解していなければ、思わぬ不利益を受ける可能性があります。
私はそのメリット・デメリットを良く理解した上で、最終的に患者様ひとりひとりに合った方法を選択して頂きたいと思っています。

当院で行っている内視鏡に関してのメリット・デメリットをご説明いたします。下記をお読みいただいた上で、患者様がご自分に合った内視鏡の方法を選択して頂けるように願っています。

胃カメラの苦痛を軽減するには(苦痛のない胃カメラを目指して)

がんの早期発見という観点で見ると、苦痛さえなければ胃カメラは素晴らしい検査です。いかに患者さんの苦痛を減らすことが出来るかが課題です。
以下に当院の取り組みを説明します。

経鼻内視鏡(細径内視鏡)について

皆さんは最近よく、「経鼻内視鏡(けいびないしきょう)」という言葉を耳にされるのではないでしょうか?
『鼻の穴から胃カメラを入れるなんて痛そう!』と思う方も多いのではないかと思います。
当然、従来の胃カメラを鼻の穴から入れたら、とんでもないことになってしまいます。
経鼻内視鏡とは従来の胃カメラの約半分の直径の胃カメラのことで、細径ファイバーや細径内視鏡などとも呼ばれます(写真)。
経鼻内視鏡は細いというだけではなく、鼻腔を通ることによって舌やのどの奥を刺激せず、従来の胃カメラに比べて嘔吐反射が圧倒的に少ないというメリットがあります。さらに、検査中に患者さんと会話することも出来るため、患者さんは苦痛を表現することができ、また患者さんから質問があればその場でお答えする事が出来ます。

経鼻内視鏡に関しては以下の項目も参照してください。

経鼻内視鏡とは従来の胃カメラをずっと細くしたものを鼻から挿入し行う胃カメラのことです。経鼻内視鏡(細径内視鏡)の導入でも説明をしていますが、胃カメラの太さは従来の約半分です。鼻にしっかりと麻酔をかけて行いますので、痛みはさほどありません。
喉と鼻がつながっているという事は、ほとんどの方がご存知だと思いますが、経鼻内視鏡では従来の経口ルート(図1)と比較し、下鼻甲介ルート(図2)や中鼻甲介ルートを通って、内視鏡が胃まで到達します。
検査を受けて頂く体位は通常の内視鏡と同様に左向きです。(図3)


図1

図2

図3
※オリンパスメディカルシステムズ(株)メディカルタウンより引用 http://www.medicaltown.net/

胃がん検診などで、精密検査が必要などと言われた方の中には、「なんとか楽に胃カメラを受ける方法はないか?」と思われる方も多いと思います。
その際に【鼻から行う苦痛のない胃カメラ!】などと書いてあるのを見ると、「苦痛がないのなら、鼻からの胃カメラを受けてみようか?」と思われるのではないでしょうか?
色々なアンケート見ても、両方の胃カメラを経験したことがある患者さんの中で、8割以上の方は次回の検査に経鼻内視鏡を希望されています。
確かに苦痛が少ないという観点では経鼻内視鏡の方が優れているようです。しかしながら、実際に検査を行っている内視鏡医の観点からは、経鼻内視鏡は操作性や画質の面で通常内視鏡に劣っており、あまり積極的に勧められないという意見を良く耳にします。

鼻から行う胃カメラ(細径内視鏡)は、口から行う胃カメラに比べて、直径は約半分、面積にすると約4分の1程度と細く、喉を通る時の異物感は格段に減ります。(この後にある経鼻内視鏡(細径内視鏡)の項で比べた写真を見ることができます。)また経鼻細径内視鏡は細いというだけではなく、鼻腔を通ることによって舌やのどの奥を刺激せず、従来の胃カメラに比べて嘔吐反射が圧倒的に少ないというメリットがあります。さらに、検査中に患者さんと会話することも出来るため、患者さんは苦痛を表現することができ、患者さんから質問があればその場でお答えする事が出来ます。

一方、口から行う胃カメラ(通常内視鏡)に関しては、経鼻細径内視鏡と比べると太く、喉の違和感もあり、そして検査中も話すことが出来ないというデメリットがありますが、経鼻内視鏡と比べると画像解像度において圧倒的に優れています。→2020年7月にオリンパス社より最新の内視鏡システムがリリースされました。これにより経鼻内視鏡の画質が格段に改良され、通常内視鏡の画質と比べても遜色のないレベルまで向上しました。
しかし経口内視鏡は経鼻内視鏡に比べて、光の明るさやレンズのくもりの取れ方、カメラや挿入した鉗子の操作のし易さという観点においても経鼻内視鏡よりも優れているため、検査に必要な時間は経口内視鏡の方が短くてすむというメリットがあります。
また、やはり経鼻内視鏡の画像よりは優れているため、精密検査の場合などには経口内視鏡の方がお勧めです。

また経鼻内視鏡を挿入するルートは左右合わせて4ルート(左右の下鼻甲介ルート、中鼻甲介ルート)ありますが、骨格の個人差によって狭い場合があり、無理な挿入により鼻出血や強い鼻痛を起こすことがあります。患者様のために良かれと思って行った経鼻内視鏡が、通常のカメラ以上の苦痛を患者様に与えてしまう事もあり得ます。

経鼻内視鏡のメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 嘔吐反射が少ない
  • 検査中に会話が出来る
  • 検査後の喉の痛みが少ない
  • 通常のカメラに比べ画質が劣る
  • 通常のカメラに比べ操作性が悪い
  • 鼻出血や鼻痛を起こすことがある

それでは、普通の口からの胃カメラ(通常内視鏡)と鼻からの胃カメラ(細径内視鏡)はどちらが良いのでしょうか?素人の方には判断できませんよね。インターネットでさんざん検索しても、経鼻内視鏡を扱っている施設では鼻からの胃カメラを勧めているし、経口内視鏡を扱っている施設では口からの胃カメラを勧めている、という状況でどちらが良いのか結局判断できないのではないでしょうか?それは両方の胃カメラを備えている医療機関がそれほど多くなく、両方備えていたとしても選択できる医療機関もほとんどないというのが現状だからだと思います。
当院では経鼻・経口両方の胃カメラを備えており、それぞれの特性を理解し、患者さんの状態を把握した上で、お勧めする胃カメラを決定しています。

鎮静剤(静脈麻酔)の使用について


※オリンパスメディカルシステムズ(株)メディカルタウンより引用

当院では患者さんのご希望によって、鎮静剤(静脈麻酔)を使い、眠った状態で胃カメラを受けて頂けます。
「通常の胃カメラで麻酔は使わないの?静脈麻酔と全身麻酔の違いは?」と様々な疑問があるのではないかと思いますので、下記をご参照ください。

◆ 鎮静剤(静脈麻酔)を使用した胃カメラについて

人によって麻酔の効きが大きく異なるので、患者さんによって薬の量を調節しなければなりません

静脈麻酔をかけるには安全への対策が必須です!

前述のように静脈麻酔は人によって薬の効き方が大きく異なります。麻酔によって呼吸に抑制がかかり、呼吸が止まってしまうケースもあるので、安全への対策が重要です。麻酔中の患者さんの呼吸や血圧などをチェックできる機械や、実際に呼吸状態が悪くなった際に対処できる医師の技量(内視鏡の技量ではなく、麻酔と蘇生に関する技量)が必要となります。

当院では麻酔中の患者さんの状態を把握できるモニターを使用し、低酸素状態では酸素吸入を行えるように準備しています(写真)。
また十分な経験と技術を備えた医師が麻酔を行いますので、安心して検査を受けて頂けます。


鎮静剤(静脈麻酔)を用いた胃カメラに関しては以下の項目も参照してください。

通常の胃カメラでも麻酔はかけますが、その場合の麻酔は喉の奥にかける局所麻酔です。この麻酔によって眠ってしまう事はありません。
次に全身麻酔ですが、これは手術の際に行う麻酔で、患者さんの意識をなくすとともに、通常は患者さんの呼吸も止めて、人工呼吸器で管理するような麻酔の事を言います。
これに対して鎮静剤を用いた静脈麻酔は、軽く患者さんの意識を落とし傾眠状態とするような麻酔で、患者さんの呼吸までは止めません。

鎮静剤を使用した胃カメラを受けた患者様が、後で胃カメラ中の苦痛を訴えることはありません。
ただし『苦痛がない』という言い方は正しくありません。胃カメラをすれば頭は寝ていても身体は苦痛を感じており、実際に患者様の心拍数や血圧は若干上昇します。ですので『苦痛を認識していない』もしくは『苦痛を覚えていない』と言った方が正しいかもしれません。検査中にすごく苦しそうにしていた患者さんでも、検査後には『すごく楽でした!有難うございました!』などと言われることがあり、そのような時には静脈麻酔の凄さと怖さを同時に感じます。
つまり鎮静剤を用いれば患者様はほとんどの場合覚えていませんので、どんなに内視鏡に不慣れな医師でも経験を積んだ医師でも、苦痛に関して言えば医師による差は出にくいと言って良いと思います。

鎮静剤(静脈麻酔)を用いる際には、喉の麻酔(咽頭麻酔)をかけないという先生もいらっしゃるようですが、私は鎮静剤(静脈麻酔)を用いる際にも喉の麻酔はかけていただきます。なぜなら鎮痛と鎮静は異なるからです。喉への麻酔は主に喉の痛みや違和感を軽減するためであり、静脈麻酔は催眠作用により苦しいという感覚を減らすものです。仮に静脈麻酔だけを行った場合、患者様は寝ていても喉の疼痛や違和感は軽減されていないため、中には苦痛により血圧が過度に上昇してしまったり暴れだしてしまったりしまう方もいます。

後述しますが、鎮静剤(静脈麻酔)を用いた胃カメラにはメリットとデメリットがあります。デメリットを受けるのが患者様である以上、それを選択するのは患者様であって私ではありません。私の方から全ての患者様に同じことを押し付けるようなことはしません。

実際に私自身すでに4~5回胃カメラを受けていますが、個人的には今でも鎮静剤(静脈麻酔)を使用して検査を受けたいとは思っていません。自制の効かなくなった状態で、自分が検査中に暴れてしまったり、呼吸が止まりそうになってしまうことが怖いからです。世の中には私と同様に感じている方もいらっしゃると思いますし、実際に当院に来られる患者様にもそのような方は沢山いらっしゃいます。ですので全員に静脈麻酔をお勧めすることはなく、メリット・デメリットを考慮した上で患者様に選択していただいています

すごくかどうかは個人差があると思いますが、通常の胃カメラは辛いか?と聞かれれば答えはYesです。何もせずに呼吸をしているよりも楽な胃カメラなどあるはずもなく、当然のことだと思います。

中には辛くないと答える患者様もいらっしゃいますが、それには『思った以上に・・』『人から聞いているよりも・・』『以前よりは・・』『それほど・・』などの前置きがあるのではないかと思います。
しかし、通常の胃カメラが我慢できないか?と聞かれれば答えはNoです。世の中には辛いことは沢山あると思います。スポーツや勉強、仕事だって辛いことはあると思いますが、我慢が出来るかどうかは人それぞれ許容範囲が異なると思います。
どうか人から聞いたことやネットで見たことで、過度にステレオタイプにならないようにしてください。

個人的には辛い胃カメラをいかにして患者様の苦痛を和らげて行うかが、内視鏡医の腕の見せ所ではないかと思っています。残念ながら『すごく辛かった』『何度受けても辛い』と言われてしまう事もあり、私自身の技量不足を感じ反省することもあります。しかしながら『以前に受けた時よりも良かった』『思っていたよりも良かった』と言って下さる患者様も多く、当院で胃カメラを受けた患者様で2回目に静脈麻酔を選択されるケースはそれほど多くありません。

鎮静剤(静脈麻酔)を使用した場合の最大のメリットは、やはり患者様の苦痛がない(苦痛を感じない、苦痛を覚えていない)ということです。それ以外にも鎮静剤を用いることにより、過度の不安やストレスを軽減したり、それ以降の胃カメラを受け易くなるなどのメリットがあります。ネットなどで、『ゲップを抑制することにより胃内の観察がし易くなる』と書いている先生もいらっしゃいますが、これには異論があると思います。私自身は静脈麻酔をかけた患者様はこちらの指示に従って頂けないため、むしろ一度ゲップをし始めると止まらず、胃内の観察が十分に行えなくなることがあると感じています。

逆に鎮静剤を用いた際の最大のデメリットは呼吸や循環の抑制です。呼吸抑制により検査中の血中酸素濃度が下がったり、循環抑制により除脈(脈が遅くなる)や血圧低下をきたすことがあります。また咳嗽反射の低下により誤嚥に伴う気管支炎や肺炎のリスクも増えます。それ以外にも検査後に麻酔から醒めるまで休んでいなければいけなかったり、検査当日には乗り物の運転を避ける必要があったりします。また前述したように鎮静剤を使用した状況ではこちらの指示に従って頂くことが出来なくなるため、ゲップをこらえたり、呼吸を一時的に止めたりすることが出来ず、十分な観察が行えなかったり、微妙な位置での組織生検を行う際に通常以上に時間がかかったりする場合があります。また血管が細い方などでは、静脈確保のための注射を何度も失敗されるなどというのもリスクの1つと言えるかも知れません。

日本消化器内視鏡学会でも鎮静薬を使用する際の利点と欠点に関してまとめていますので、参考にしてください。
http://www.jges.net/faq/faq_answer03.html

鎮静剤(静脈麻酔)用いた胃カメラのメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 検査中の苦痛を感じない
  • 検査に対する不安やストレスが和らぐ
  • それ以降の胃カメラを受け易くなる
  • 呼吸や循環が抑制されることがある
  • 誤嚥に伴う合併症のリスクが増える
  • 麻酔覚醒までしばらく休む必要がある
  • 検査後の乗り物の運転に制限がある
  • 正確な検査が行えなくなる場合がある
  • 十分な設備や人員の確保が必要となる

鎮静剤に対する反応には個人差があります。当然、身体の大きな人と小さな人では量を変えます。また年齢によっても量を調節します。しかしながら、年齢や身体の大きさだけでなく、鎮静剤に対する反応は人それぞれ違うところが麻酔の難しいところです。十分な量だと思っていたら量が足りずに予想していた鎮静が得られなかった、逆に鎮静剤の量が多すぎて呼吸が止まりそうになってしまった、などという事はしばしば経験します。ですので、どんな状況にも対応できるような準備と医師の技量(内視鏡の技量ではなく、麻酔と蘇生に関する技量)が必要になるのです。

現在では鎮静剤の使用も一般的になってきており、鎮静剤を用いた偶発症の発生率もそれほど高いものではなく、通常は安全に行える検査と言って良いと思います。また私自身は麻酔科や救命救急部でのトレーニングを受けているため、安心して鎮静剤を用いた胃カメラを選択して頂いて結構です。
しかしながら、全国調査の結果でも内視鏡の前処置における偶発症では鎮静剤に関わるものが約半数で、前処置の偶発症に伴う死亡数でも鎮静剤に関わるものがトップです。
偶発症の頻度は低いものですが、内視鏡に関わる人員、設備、医師の技量(内視鏡の技量ではなく、麻酔と蘇生に関する技量)が不十分な場合にはそのリスクは統計以上に高くなるということを認識しておかなければいけないと思います。

患者さんも見ることの出来る内視鏡モニターの設置

当院では3台の内視鏡モニターを使用しています。1つは内視鏡医の見るモニター、2つ目は内視鏡介助者の見ることの出来るモニター、そして3つ目は患者さん専用のモニターです。
人の苦痛を構成する要素は、実際の苦しさだけではありません。『今の苦痛がもっとひどくなるのか?いつまで続くのか?』という不安によって、人の苦痛は増大します。
当院では、『今どこを見ているのか』『どこの部分がつらいのか』『あとどれくらいで検査が終わるのか』などを細かく患者さんに説明しながら検査を行っています。こういう理由で『今はゲップを我慢して欲しい』『今は呼吸を止めて欲しい』などとお願いし、患者さんの協力を得ることによって、検査をスムーズかつスピーディーに終わらせています。見ることや予測することの出来ない不安を取ることによって、患者さんの苦痛を軽減しています。

上記以外の胃カメラやピロリ菌に関する【よくあるご質問】についてまとめましたのでご参考にしてください。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ参照)の発見以来、色々なことが明らかになってきています。以前は『できれば毎年受けてくださいね』と言っていたいカメラも、患者さんによってお勧めする頻度が変わってきました。ピロリ菌の存在の有無、粘膜の状態などにより大きく異なってきます。どんなに胃カメラが楽になったといっても、やはり不要と思われる検査は避けるべきであり、個人的にはピロリ菌の感染既往がなく、粘膜もきれいな方に対しては5年に1回程度しかお勧めしていません。

ピロリ菌に関する研究が進み、ピロリ菌の感染と胃がんとの関係が明らかになってきました。(ヘリコバクター・ピロリ感染と胃がんとの関係を参照)
そのため、保険診療ではピロリ菌の除菌するためには、まず内視鏡を行い胃がんが存在しないことを確認することを義務付けています。どうしても胃カメラを受けたくないという方に関しては自費診療での除菌も可能ではありますが、お勧めは出来ません。
下記の写真は、検診でピロリ菌の感染を指摘され、当院に来院された30台の女性です。
来院時に既に進行胃がんが存在しました。

ピロリの除菌により胃がんの発生を抑制する効果があることが明らかになっています(除菌による胃がんの抑制効果を参照)。しかしながら、もともとピロリ菌の存在しない胃と比較すると胃がんの発生率は非常に高いため、胃カメラによる定期的な観察が必要です。一般的には除菌後も1年に1回の胃カメラが推奨されていますが、除菌を受けた年齢や胃粘膜の状態などによっても胃がんの発生率は異なると考えられますので、治療を受けた施設でどの程度の間隔で胃カメラを受けたらよいかご相談ください。

前述の通り、除菌をすると胃がんの発生を抑制する効果があることが明らかになっています(除菌による胃がんの抑制効果を参照)。しかしながら、もともとピロリ菌の存在しない胃と比較すると胃がんの発生率は非常に高いため、胃カメラによる定期的な観察が必要です。

除菌により胃がんの発生を抑制する効果があることが判っていますが、胃がんにならないわけではありません。
当クリニックでは2013年にヘリコバクター・ピロリ胃炎に対して除菌治療が行えるようになってから、年間200人以上の患者様に除菌治療を行ってきました。除菌後の定期観察の胃カメラにおいて、直近の1年間で4人の方に胃がんが見つかりました。しかしながら幸いなことに全員、早期がんの状態で発見され、内視鏡的な切除により治癒できました。
除菌後でも、もともとピロリ菌の存在しない胃と比較すると胃がんの発生率は非常に高いため、必ず定期的に胃カメラを受けるようにしてください。
定期的な観察を行うことにより、仮に胃がんになったとしても早期の治癒可能な段階で見つけられる可能性が高くなります。

一般的には免疫が正常な方にピロリ菌が再感染することは無いと思われますが、実際には1%程度に再感染が報告されています。しかしながら、除菌判定のために行う検査も100%確実とはいえないため、除菌判定自体が正しくなかったのか再度感染を起こしたのかの鑑別は困難と思われます。

ピロリ菌除菌後の患者様にとって一番大切な事は、仮に胃がんが発生してもなるべく早期の段階で見つけるということだと思います。バリウム検査(胃X線検査)でも早期胃がんの発見は可能ですが、施行者および胃内の環境(付着している粘液等)により検査の精度が大きく異なるためお勧めできません。除菌後の定期観察には胃カメラを受けてください。

バリウム検査(胃X線検査)で慢性胃炎や萎縮性胃炎と指摘されている場合には、X線の読影医(検査医)はピロリ菌の感染を疑っている可能性が高いと思われます。しかしながらあくまでも胃がんの検診であるため、要精査(D)と判定が出来ない場合があります。今までにピロリ菌に関する検査や除菌治療を受けたことがない方で、バリウム検査(胃X線検査)において慢性胃炎または萎縮性胃炎と診断された患者様は医療機関への受診をお勧めいたします。

ペプシノゲンとは胃の粘膜から分泌される酵素です。多くは胃内に分泌されますが、その一部が血液中にも入り込むため、それを測定しています。胃粘膜の胃底腺領域の萎縮(老化)が進むとペプシノゲンの分泌が減るため、ペプシノゲンを測定すると胃の萎縮の程度を推察することが出来ます。会社で行われる検診の多くは、このペプシノゲンの測定とヘリコバクター・ピロリIgG抗体の測定をセットで行っている(いわゆるABC検診)ことが多いようですが、ペプシノゲンのみを測定する場合もあります。
ペプシノゲン陽性と診断された場合には、胃の粘膜が萎縮し弱っている可能性があるということであり、胃がんの存在を意味するものではありませんので安心してください。
ただし、胃の粘膜の萎縮がどのような理由でどの程度あるのかを確認する上で、胃カメラによる確認が必要となりますので、医療機関に受診してください。
ペプシノゲンおよびABC検診の詳細に関しては、ABC検診のページをご参照ください。

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